インセプションを二度観た
おもしろかった!
多重構造、銃撃戦、ミッション、父と息子の確執…好きなキーワードがモリモリ。特に「CGをあまり使っていない」と聞いてグッと来たので観ることにしました。
【あらすじ】
夢に忍び込み、アイデアを盗むことを稼業とする主人公コブ。ライバル企業をつぶしたいサイトーから、夢の中でアイデアを植え付ける「インセプション」を依頼される。幾重もの夢に潜るため、命の危険が伴う仕事だ。しかしコブにはやらなければならない理由があった。
報酬は、子供たちに会うこと。コブは妻モルを殺した容疑をかけられているため、子供たちの待つ家に帰ることができないのだった。コブはなぜインセプションを行うようになったのか? 夢の中で眠ることを繰り返し、たどり着いた場所は――?
【ネタバレ三昧】
1回目を観た夜、検索しまくり。そこで見つけたこの仕掛けに鳥肌が立ちました。「目覚めの曲」として使われているエディット・ピアフの『水に流して』に隠された謎。階層が深くなるにしたがって、時間の流れがゆっくりになるという物語の設定とBGMをシンクロさせていたんです。詳しくはリンク先をご参照ください。
◆人物の魅力が際立つ“外し”のシーン
夢の中で夢を観るというややこしい設定をわかりやすく見せてる。はしょるところは思い切り! 物語はこうでないと。同じクリストファー・ノーラン監督の「メメント」より全然わかりやすいです。
主な登場人物は男性5人と女性2人。それぞれが魅力的に描かれてた。特にアーサー役のジョゼフ・ゴードン=レヴィットとイームス役のトム・ハーディ。アーサーは誰がやってもかっこよく見えるお得な役だと思うけど、ジョゼフは品と色気があってすごくハマってた。ロバート役のキリアン・マーフィも、紅潮した頬とおちょぼ口が相変わらずホモっぽいけど、父との確執に悩む御曹司を好演していました。
*1好きなシーンは挙げるとキリがないな。たとえば…イームスがインセプションのプランをプレゼンした後、「サンキュー!」っていってニッコリするところ。同じくイームスが「どうせ夢なら派手にやろうぜ」と火炎砲をぶっ放すシーン。「キック」の説明後、椅子をグラグラしていたアーサーにちょっかいを出すシーン。
*2アーサーがアリアドネに「キスミー」と言ってキスする一連のシーン。同じくアーサー、ホテルの戦闘、エレベーター内での縮こまりカウント。ラスト近く、空港で他人のフリをしながらメンバーがコブに目配せするシーン。そうそう、あとロバートが雪山で「ビーチがよかった‼」とイームス(彼の夢だから)にキレるシーン。堅物のロバートに言わせるところがいい。
クライマックスの銃撃戦はちょっと長く感じた。その後のロバートと父の確執が溶けるシーンを効果的に見せるためだったのかな。イームスが大活躍しまくり。コブ、アーサー、イームスはどこかで戦闘訓練を受けたの? みなさんケンカ強すぎです。裏の稼業たるもの護身術はできて当然なのでしょうか。かっこいい。
*3ひとつ気になっているのは、第一階層でガレージに逃げ込んだあと、コブとアーサーがモメるシーン。過去にコブが虚無に落ちたときのことを引き合いに出して、アーサーは「二度と戻れない! 何かを残してない限り!」て言い放つ。これが何かの伏線なんじゃないかといまだ引っかかってます。単純に子どものことかもしれないけど。
◆風変わりな名前の由来は?
これを書きながら登場人物の名前が変わってるなと思ったので調べてみました。まず、アリアドネはギリシャ神話の女神からとったので間違いないでしょう。調べるとそのものズバリの説明。報酬と割が合わないだろうに、おかしなコブを辛抱強くカウンセリングしながら迷宮から救い出す女神ですもんね。
「アリアドネーは、クレーテー王ミーノースと妃パーシパエーのあいだの娘。テーセウスがクレーテーの迷宮より脱出する手助けをしたことで知られる。アリアドネーという名は『とりわけて潔らかに聖い娘』を意味するので、この名からすると、本来、女神であったと考えられる」(Wikipediaより)
コブとユスフはおそらく旧約聖書のヤコブとその息子ヨセフ、モルは眠りと夢を司るギリシャ神話の神モルフェウス、アーサーはイギリスのアーサー王、と、ここまで考えてイームスで行き詰る…。ミッドセンチュリーの家具デザイナー、チャールズ・レイ=イームズしか知らないんだけど、キリスト教かギリシャ神話でイームスとかイームズっていう人物いるかな? ちょっと宿題。
*4チャールズ・レイ=イームズから名前をとったと仮定すると……、彼の代表作はイームズ・チェア。その特長は大量生産とスタッキングを可能にした2点。イームスは他の人に化ける偽装士だから、他の人を“量産”し、顔を“スタッキング”することによって仮面をかぶると考えるとなんとなくそんな気が…しませんかね…。ちょっとこじつけすぎた。
*5眠りと夢を司るギリシャ神話の神モルフェウスについてもおもしろい話を見つけた。引用ではさらっと書いてありますが、変身が得意な神だったようです。ちなみにモルフェウスは麻薬モルヒネの語源なんですって。
ソムヌスはユノからの命令を聞き、息子たちの中から夢の神モルフェウスを選んでアルキュオネの元に派遣しました。モルフェウスはケユクスそっくりに身を変えて彼女の夢枕に立つと、こう告げました。「愛しい妻よ、私はおまえの危惧した通り嵐に遭って死んでしまった。どうか私の死を嘆き、葬儀を執り行っておくれ。このままではつつがなく死の国に赴くことも出来ない」と。
【懸命に考えました】
今回、1回目を観た後に気になってたポイントを集中的に観ました。特にラストシーン。あくまでも個人の見解です。物事はなるべくポジティブに考えるでござるよ。
◆サイトーおじいちゃんを見つけたのは何階層?
インセプションを計画したのが現実世界(ゼロ階層)として考えます。モルにロバートが撃たれ、サイトーが死んだのが第3階層。仮死状態のロバートを救うため、コブとアリアドネだけが第4階層に。アリアドネはロバートを連れてキックの連鎖で予定通り目覚めます。
じゃあコブは?
サイトーおじいちゃんと会う階層では波打ち際で目覚めます。コブは虚無に落ちたサイトーを探すため、第5、第6、第7…と潜ってさまよっていたのでしょう。どこかの階層にいたサイトーおじいちゃんはそこを現実だと思い、あんなおじいちゃんになるまで「誰かを待っていた」。コブは上の階層で5分探している間に、サイトーの世界では(例えば)50年が経っていたんじゃないかな。かつて、コブとモルがそうしたように。
*6虚無の説明について、わかりやすく書いてるブログがあったので紹介。「インファナル・アフェア」の“無間道”のようなものということでしょうか。教養があるって素敵。
英語では“LINBO”と言ってましたけど、“リンボ”とは、ダンテの『神曲』などに登場する地獄界を構成する一層、“第一圏 辺獄”のことです。(中略)
リンボは、洗礼を受けなかった者、信仰がなかった者が、呵責こそないが希望もないまま永遠に時を過ごす場所です。おそらく、夢の階層でも最も時間の流れが遅い場所という意味合いで、この呼び名が選ばれたのでしょうけれど。我々日本人にはピンとこない単語というわけで、“虚無”と訳されてしまったようですね。
(てすかとりぽかより)
◆ラストシーンは夢? 現実?
核心。最初、コブは現実に戻ったんだと思ってた。
夢だという意見の中には「年齢の違う2人ずつの子どもがクレジットされていた」という理由をあげている人がいたけど、クレジットより本編でしょって納得できませんでした。仮に夢だとして、次の意見ならまあエンドロールありきの話でも腑に落ちる。と渋々思ったもんでした。けど、私はラストシーンは現実に戻ったと思いたかった。
私は、映画のラストは夢の中だと思う。
ただし、エンドロールで「目覚め」の音楽が鳴る
(らしい…次に見た時に確認します><)ので
「キック」が届いて、あのシーンの後コブは現実で目覚めるのだと思ってます。コブが子供と会えないのは、刑事事件的な意味もありますが
さらに、自分の罪について苦悩があるからで
子供と会うのを自分に「許さなかった」んじゃないかだから、まず夢の中で子供と向き合う。
自分を「許す」シーンが、映画のラストだと思ってます。
でも2回目を観たら、ラストシーンでの子どもの服がそれまでに出てきたのと同じだったので、やっぱり夢という結論に至りました。あのシーンの階層はモルが飛び降りた階層と同じ。つまり、すべては先に現実世界に戻ったモルが、コブを現実に引き戻すために仕組んだ心理療法インセプションなんです。どや!
1回目を観てる最中から、モルが言ってることは正しいのかもっていう考えがずっと頭から離れませんでした。物事は、立場が変われば見方が変わるでしょ?
◆トーテムは止まっていた
トーテムが回転を止めるシーンは確かにありました。映画の途中でトーテムが止まるのを確認してないシーンが出てきたから、その直前の眠りからラストまでが夢だという説がネットでよく見られます。さすがに、映画の冒頭から全編モルが仕組んだインセプションだったという説はありえない?
でも、よく考えてください。あのコマはそもそもモルのトーテムです。ドドーン! コブのトーテムは一度も登場していない。ということは…? 夢の世界で生きるために金庫に自分のトーテムをしまいこんだのが、実はモルではなくコブだったという可能性だって出てくる。モルはコブの主観でしか語られないんだから。
*7さらに、アーサーもアリアドネもトーテムを持っていることをわざわざ見せているのに使うシーンがない。イームス、ユスフ、サイトーについては持っているかどうかすらわからない。トーテムの存在自体が、そこが夢ではないとコブに信じ込ませるための小道具だったのかもしれないよね。
あくまで可能性ですけどね。SF小説で夢オチがご法度なのと同じぐらいギリギリの説です。何が物語として正しいのか、というとこのどっちでもないもどかしさを味わうことこそが正しいのだろうけど、ポジティブに考えようのコーナーなのでこういう説をとなえてみるでござるよ。いかがかな? ドロン。
*8ていうか、モルとコブの子どもたちって、夢の中の存在なのでは…? という新たな疑問がわいて震え上がっています。どうだっけ。DVD出たらもう1回観なきゃw
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